馬の頭の走り書き

書いているケモノ小説(BL含む)のこと。あるいは、たまに読書日記とかプログラミングとか。

十番目の惑星と騒がれてたなあ。

風邪ひいちゃったよー。
泉和良『セドナ、鎮まりてあれかし』


購入に至ったプロセスは割とはっきり覚えている。

いつものように、買う気もないのに最寄りの書店に入り、海外作家エリア(となぜか創元/早川がまとまっている)を物色しはじめ、背表紙のタイトルに目を惹かれる。手に取り装調を眺めてキレイだなあ、と裏のあらすじへ。購入決定しつつも買わずに出る。数日後、満面の笑みで『夜想曲集』とともに購入するスバルの姿が……。とまあいつも通り。

小惑星セドナ。大幅なテラフォーミングによって人が暮らしていたこの星は戦争でぼろぼろになった。地政学的にも重要なこの星は厳しい監視の下に置かれ、そこで死んだ兵士たちの慰霊もままならぬ状態となる。その星で非公式に遺骨掘りをする老人イーイーと人間くさい旧型アンドロイドのクイミクのもとに、ゴロという若者がやってくる。任務中の事故で脳に障害を抱えた彼は「ぼくは たいようけんを まもります」という意思の元で赴任してきた。夜をばらまかれた戦略ナノマシンが支配するセドナで、戦争後に現れた動植物たちに興味しんしんの目を向けながら、遺骨を掘り出していく。

読後は非常に穏やかな気分になれた。ついでに泣いた。あくまでも、ついでに、自分の意思で、だ。SFではあるけれども――セドナ独自の生物や地形、言葉などの描写が丁寧に、観察しているようになされている――なによりも、中心にあるのはゴロの成長と、「私」の見たものがもたらしたものが見所だと思う。情報の欠落を許すなら「いい話」と表すことができるけど、たとえば、ゴロが冒頭で見つけたヒノシッポに出会うたびに生態が分かっていく楽しさ、戦後にあらわれた動植物たちの不思議さ、などを語らずしてこの話は語れまい。SFが苦手でも、ハードで難しい言葉は出てこないので、そんな人にも安心しておすすめできる。むしろ、SFに苦手意識を持っているひとに読んでもらいたいしおすすめしたい。というわけで、オススメ度高し。

P.S.
セドナって聞き覚えある名前だなー、と引っかかりながら読んでいて、突然気がついたこと。セドナは発見当時、「第十惑星発見される」みたいな感じでテレビなどで騒がれていたのでした。それが印象に残っていて、引っかかったのだと思う。思い出したときの懐かしい気分といったらなかった。

ちなみに、実際は冥王星よりもさらに小さいので惑星に入ることもなく、冥王星自体が惑星からはずれてしまった。うーぷす!