馬の頭の走り書き

書いているケモノ小説(BL含む)のこと。あるいは、たまに読書日記とかプログラミングとか。

実射影平面の三次元空間へのはめ込みとか

進むほどうへえ。
円城塔『Boy's Suface』

Self-Reference ENGINEでおなじみ、円城さんの短編集。この本も聞いてはいたけど訳が分からなかった。後半に行けば行くほど。短編進めば進むほど。お話のなかがひっくり返って意味が分からない。っていうかこの本、恋愛小説短編集だったんだ。

いっこめの『Boy's Surface』は読めた。とってもいいお話で、レフラーとフランシーヌの考えの食い違いから生まれた物語あるいはその記述構造が非常に印象的。自意識とは結局どこに根を持つのか、に端を発した議論は本人たちの手から大きく離れて、トルネド構造のなかでいつまでも続いているというのが非常につらい。いつかどこかで、トルネドがすべて合流しどんな錯覚も最終的には同一であるという結論に達し、フランシーヌの頑固な意見をもひっくるめてまとめる時が来ればいいな。合流が成就と等しくはないけど、数理的な恋だ。

ふたつめは『Goldberg Invariant』。要するに、計算能力は大きくなったけどそれを用いるようなすてきな計算がないので、言語にエージェント撒いて探索させてみました。その結果がこれだよ。というお話。GRAPEはほんとに64までたどり着くのかなあ、と思った。

みっつめ、『Your Heads Only』。始めにセルオートマトンっぽい話が出てきたので、おお、と思ってたらその章だけだった。人生で四人目の「人間」を見つけ、その「人間」の少女の奔放な人生を垣間見ながら恋をしている男と、よく分からない話をつづる話者が入れ替わり語っていく。どんどん混ざっていって、最後には男の方によく分からない話成分が浸食してきてる印象。始めに提唱したルールによって、それが守られるならば、生まれる格子模様は規定される云々ととっても楽しい。けれど話を全体で見るとよく分からない。愛してるならそれでもいいのかも。

Gernsback Intersection』。これは意味が分からなかった。はじめから、最後まで。円城さんの本領発揮とも思えるくらい分からなかった。章の区切りに現れる記号の意味が、タイトルページに書いてある図に関連する者だとは推測できても、実際的に何を表しているのか皆目検討もつきなかった。♂記号が花婿で、♀記号が花嫁? まあそうだとしてもよく分からない。花嫁へ花婿を運ぶあの一連のお話はぶっとんでいて笑ったけど、全体的には、何度も繰り返すけど、よく分からなかった。

『What is the Name of This Rose?』。本書の解説。と言いつつ一章では物語生成プログラムがでてきてよく分からない感じで進む。二章で、各短編のタイトルとともにある図がなんであるか、とくに『Boy's Surface』の図と章題に関する説明がなされ、なんだか納得。でもやっぱりよく分からない。あと引用が多かった。

全体的によく分からなかった。もはや仕掛けを楽しむのが円城さんの小説の楽しみ方なんだと思った。いわゆる「主題」があるのではなくて、思いついた(といったら悪い印象になるけど)仕掛けを試してみている、という感じなんじゃないだろうか。よく物語生成とか言語について書かれているので、そうであっても不思議ではないかなあ。とりあえずは、『Gernsback Intersection』のトリックをだれか教えて。