馬の頭の走り書き

書いているケモノ小説(BL含む)のこと。あるいは、たまに読書日記とかプログラミングとか。

侵害土壌

期待と諦めを胸に読み始めた三部作の第六シリーズ!
オーエン・コルファー『新 銀河ヒッチハイク・ガイド 上』

簡単に買った経緯を。たまたま紀伊國屋書店に寄り「あの本を買おうかなー」「ハヤカワエリアでぶらぶらしようかなー」などと考えながら河出文庫の前を通ったところ視界に『銀河ヒッチハイクガイド』の文字があったのできっと早朝が新しくなったに違いないなんだか派手な表紙になったもんだと視線を外そうとしたところタイトルに「新」だの「上」だのといった文字が見えたのでもう一度見そして上に書いたタイトルであると理解しオーエン・コルファーってなんだか見覚えのある響きそもそも文字に響きとはおかしなことだけれど語感という意味では大丈夫だ問題ないので記憶を引き続き探索したらちょっと前に出た別の作者による『ヒッチハイクガイド』の続編の作者がまさにそういう名前だったようなという記憶に鉢合わせししたがってこれはどうせ邦訳は出ないだろうとふんで買ったその原著"And Another Thing..."であるという帰結に達しそれならばファンとして不安と期待と懐疑を心に満たして即買うべきだと思いそうしようと決断する前にレジに立っていたという一品が今回の主題である『新 銀河ヒッチハイク・ガイド 上』である。長い。一文にして五百文字弱。

どんな本かも大体上に書いた。愛すべき五作からなる三部作の六作目である。ぶっ飛んだユーモアにストーリーがすてきな『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズの六作目。ダグラス・アダムズ亡きあと、遺族公認のもと書かれたもの。僕はこのシリーズがとびきり好きなので、その偏った目線で感想を書いてしまおうと思う。

まず思ったのは、「これを読んだ人はこちらも読んでいます」「評価の星を」といった、今風なことばが数多く紛れ込んでいること。これと「ガイドによる注釈」がついていることで、なんだか違うなあというもやもやが漂う。そして、「スコーンシェラス・ゼータのマットレスのような」という表現やこれに類するような過去作の用語が唐突に姿を現し、にやっとするどころかしつこいと感じた。マグラシアとかサイラスティック・アーマーフーィンドとか。なんというか、スターウォーズファンの書いた二次創作のようなにおいがぷんぷんする。自分の脳内で『ガイド』の世界を広げていった楽しさみたいなものが。ダグラスならきっと、注訳を地の文に突飛かつなめらかに入れていたに違いない。あるいはファンにこびているようにも見えるからかもしれない。現時点、上巻を読んだ段階では、ガイドの続編というよりはファンアートのような感じで読むと楽しめるといった感じである。トリリアンがあまりにもキャリアウーマンみたいな性格になってしまって、またランダムがあまりにも黒い感じで、その点に関してはちょっと目を覆いたくなるなあ。あと、ヴォゴン人にも繊細なやつがいるんですというのは一番やってはいけなかったと思う。ダグラスになりきれ(ら)ないのならば。

悪いことばかりかというとまったくそんなことはなくて、おもしろいところもたくさんある。アーサーが夢から覚めたときの反応(女二人に怒鳴られてるのが聞こえるうれしい)とか、「なにか取ってきてほしいものはある?」とか。もしかするとガイドよりも知れ渡ってる、恐怖のあのお方が出てくるところもなかなか笑った。ところどころ、くすりと笑ってしまう小ネタはいい線いっていると思う。

なんだかがっつり書いてしまった。好きすぎた。『ほとんど無害』の訳者あとがきに書いてあった、ダグラスが書こうとした『ガイド』六作目、読んでみたかったなあ。しんみりしてきた。
よし、訳者あとがきを読もう。

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ダグラスをしのびその日一日はタオルを身につけるという、タオルデーが実は明後日、五月二十五日となっております(ちなみに命日自体は五月十一日)。みなさんタオルを忘れずに用意しておきましょう。ここで「みなさん」ということばは、前に「『銀河ヒッチハイクガイド』シリーズを愛してやまぬ」という修飾詞が省略されている者とする。

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あとがき読んだ。なにこれ早く下巻読みたい。