馬の頭の走り書き

書いているケモノ小説(BL含む)のこと。あるいは、たまに読書日記とかプログラミングとか。

仲の悪いあいつの作文

今回はハードカバーだよ!
アレックス・シアラー『青空のむこう』

ひとことで言うと、語弊があるけど、主人公の男の子ハリーの死出の冒険物語。ハリーは姉とけんかして「ぼくが死んだらきっとすごく後悔するぞ!」といって家を飛び出し、トラックに衝突してしまった。やりのこしたことをかたづけて心のこりがなくなったとき、人は〈死者の国〉のむこう、〈彼方の青い世界〉にむかうことになる。

主人公が死にたてほやほやの男の子であるという設定がまず斬新。どんなに痛々しい表現がくるんだろう、と構えて読みすすめたけれどそういったものはなく、死ぬなと思った瞬間に〈死者の国〉につくというしくみらしい。ハリーを現世にひきとめるものをなくすために現世にもどるのだけど、通っていた学校にまず行ってしまい、そこでショックをうけることになる。自分の居場所は他人のものになっていること。友人たちが(死後すぐは悲しみにくれていたとしても)たちなおっていること。親友がハリーと仲のわるい友達とうちとけたようにあそんでいたこと。その仲のわるい友達がハリーについて書いた作文のこと。壁にはられた作文を読むシーンは、もう教室で勉強したり遊んだりしゃべったりすることはできないのだ、ということをつよく実感させてくれる一番最初のできごとだった。終始「ぼくがいなくても世界はうごく」といったことが見いだされるばかり。そうして自宅へ。

学校とはうってかわって落ち込みまくっている家族たちをみてかなしく、なぜ自分がここにいてあげられないんだと思う。そして姉に、ニューヨークの幻ばりの力を発揮して、謝罪と愛情をしめす。そのあとの文章はショックでもあり、先が開け光がさしたようにも思える。〈彼方の青い世界〉手前での独白はまぶしすぎ、悲しすぎる。

「死」というものにむきあって書かれているということが、とくに物語の締めくくりかたを読むと非常によく分かる。主人公は死んだことの実感をじょじょに得ていき、生きたいと強く感じた上で、死んだことを認知する。このプロセスが、なんだか人間の(精神面での)成長をみているみたいで、または魂の外層をはがして純度をあげていくようにもみえて、苦しい気持ちにさせられた。

とてもオスススメ。そしてなんちゅー時間だ!