馬の頭の走り書き

書いているケモノ小説(BL含む)のこと。あるいは、たまに読書日記とかプログラミングとか。

決死の車避け

最近、結構読んでいる気がするぞっ。そしてダグラス・アダムズ的文章のなんたるかを忘れつつあるので、またH2G2を読まねばなりますまい。
ポール・オースター『ティンブクトゥ』


死期迫る放浪のへっぽこ詩人ウィリーは、自分が死んだ後速やかに新しい主人を探せという。ぼろ雑巾みたいな老犬ミスター・ボーンズは生涯の友ウィリーとの思い出を回想しながら、ウィリーのいなくなった世界に何の意味があるのかを考える。

まず、動物文学とは違うところにある話だった。後書きにもあったけど、動物の話というよりは、動物に入った人間の話、のような印象。ミスター・ボーンズの思考はまさしく人間のそれだし、作中も述べられるとおり、肉体に精神がひきずられているから犬らしさを呈して、直截的には話に関係しないけれど、〈匂いのシンフォニー〉の話がとてもそれを掘り下げていたと思う。そして、ミスター・ボーンズの目から見た、ウィリーのまわりの人たち。感覚を通じて語られている──叩かれたとか、腹撫でられたとか──せいか生き生き、というか生々しい。物語の最後は、ミスター・ボーンズがウィリーの助言にしたがって車避けゲームに興ずる。その後結果は明示されないけど、たぶんティンブクトゥに到達したのだと思う。

P.S.
「ティンブクトゥ」って異国的で、どの地域にも属していなさそうないい名前だなあと思っていた。そしてアマゾンページを探すためにググったらなんということでしょう。
トンブクトゥ - ja.wikipedia
実際の地名だそうな。その到達困難性から「遠い土地」の比喩としての用法が生まれたんだそうな。ぼくの中では、サマルカンドについても同じことを感じたのだけど、ハイパージオグラフィックな言葉として根付いていきそうなことばだなあ。こういう「土地を越えた土地」みたいな「カテゴリを越えたことば」の語彙が増えていけばいいなあ。