息抜きと称して
こんばんは。
息抜きにちょっとした文章を書いてみました。
さて、また続きに戻りますか。
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彼らは何もまとわず、薄い布地に包まれていた。
泣きじゃくる犬と、守るようにそれを抱く狼。
カーテンの隙間を抜け出してやってきた月の光が、犬の少年の濡れたほほを照らす。
地震か何かのように突然おそってくる不安に、彼は立ち向かっていた。
二人の間にはたしかな愛があった。
それはおそらく永久のものであろうが、世の風潮が彼らに安らぎを与えない。
おそいくる不安は、彼が先に逝ってしまうことと恋人であることをおおっぴらにできないことがもたらすものだった。
「なんでさ、なんで……」
裕哉の胸に鼻づらを押し付ける。
やわらかな灰色の毛に雫が輝いた。
黙って明の頭を撫でる手が、包みこむ体が、激しく愛しあったことが、彼の不安定な心を支えている。
震える心を落ち着かせてくれる。
自分は間違っていない、このあたたかさが示してることだ。
泣き疲れて眠ってしまった明を強く抱きしめて、ひたいを重ね合わせる。
泣きじゃくる恋人を見るたびに思うことはいつも同じ。
「ゴメンな」
つぶやいて、裕哉は濡れたほほをなめてやった。
半月がのぞいている。
二人の思いを映してぼんやりと空に揺れていた。