馬の頭の走り書き

書いているケモノ小説(BL含む)のこと。あるいは、たまに読書日記とかプログラミングとか。

ジョン・ボイド『エデンの授粉者』

 著者はもともとSF書きではなかったらしい、とそう聞くとなんだか納得してしまった。

 あらすじはこんな感じ。


 惑星フローラには地球の植物と似た、しかし大層進化した植物が生息している。地球のランやチューリップ、その他もろもろの植物に似た植物が生えており、「花の惑星」などと呼ばれている。

 植物学者フリーダの婚約者であり同じく植物学者のポールは調査隊の一員としてフローラに赴いていて、現地植物の調査に当たっている。調査隊と共に期間するポールを待つフリーダだが、戻ってきた隊の中にポールはいなかった。ポールの代わりに戻ってきたのは手紙と、調査隊員の一人で学生のハルがポールよりフリーダにと預かってきたフローラのチューリップだった。

 それは、雌雄を持った植物で、空気袋で音を鳴らすことができ、そしてなんと音を用いて相互にコミュニケーションしているらしいことがわかったのだ。

 このあとめちゃくちゃ研究した。セックスもした。


 この話の前方九割くらいは、残り一割のためのながあい布石である。

 そう言い切って問題ないと感じるほど、ラストが怒涛の面白さで、ラスト以外が退屈だった。ラストでやっとフローラへ赴くからだ。それまではぶっちゃけプロローグだ。

 異星の花がコミュニケートするとか人間を魅了するとか人間に牙を剥くとか、まあよくある話であるプロローグ。なんだか文学的なんだが小洒落てるんだかわからない会話とともに政治的なうんぬんとか心理的なうんぬんとかがかんぬんされるところにはなんとも辟易していて、読むのやめようかとも何度か思った。主人公の堅いんだか緩いんだかわからない貞操観念というか浮気性のせいもある。自分勝手に過ぎて、でも上司をやっつけたときは少しスカッとした。

 そしてフローラに降り立ち、婚約者と再開し、植物の謎を解き明かしてめでたしめでたしならぼくは感想すら書かなかったと思う。

 実際は、お堅いポールをして地球を捨てさせ、フリーダを完全に取り込んでしまったフローラのランたちが出てからは最高だった。オスのランとフリーダのセックスとか、たぶん旦那はメスのランとやってただろうけど(出てこなかったけど)、エとてもロい。

 さらに調査隊員たちに見つかり地球に連れ戻され精神病院にいれられても、あの手この手で結局フローラに舞い戻るとは!

 そしてなにより、オスのランとのアレによりできた子供が、文字通りの種! しかも遺伝子の交換だかなんだかで、ポールの特徴も受け継いでいる種!!

 その発想はありませんでした。

 SFとしては、そもそもなぜ地球のとほぼ同じ植物がいて、遺伝子の交換なんて(できるのも驚きだけど)できるくらい似通ってるのか、とかいろいろツッコミどころはあったので、ソフトなものとして読めばよさそう。

 文章は、詩的な言い回しというか気障な言い回しというか、鼻につく言い回しが多くて読みづらかったかな。ぼくの文章もそんな感じなんだろうか。気を(たぶん)つけよう(と一旦は思ってみただけ)。